「鵺」とは、頭が猿、足手は虎、尻尾は蛇という怪物です。源頼政という有名な武将に射殺され、死骸は淀川に流されました。能「鵺」はその後日謂です。殺された鵺の魂が僧の前に現れ、昔の出来事を語り、見せます。そして暗闇から暗闇へと沈んだ魂の救いを求めて、又夜の海に消えて行くのでした。(夏休み能楽体験教室パンフレットより)


「鵺のような人」という言い回しがある、というのを、はじめて知った。
ぬえ。からだの、部分部分がそれぞれ別の生き物に似ている妖怪。そんなことから、「得体のしれない存在」の代名詞になっているという。
3年前、娘がこの体験教室に参加したのが、お能との出会いだった。

そのときの演目は「安達ケ原」。

はじめて観るお能は、、、何が何だかわからないけど、、とにかく迫ってくるものがあって。涙がほろほろ出た。

山姥のかなしみと、その時の、意味もなく自分が抱えて持て余していた寂しさ、苛立ちが、リンクしたのだと思う。

あれから三年経って。

あの頃の焦りや苛立ち、寂しさは、(たまに、ふと唐突に襲われることもあるけれど)不思議に、消えていった。

卒塔婆小町、西行桜、隅田川、、

思うと、能の中に、何か、すっと腑に落ちる、こたえ、というか、があったような気がする。

…自分探し、とか、、、そんなことは、おこがましい…という、、、?

今、を、生きていくしかない、というか?

変わらないものを大事にしていくのが生きていく努めなのかな、という?

…あ、まだ、こたえ、出てないな。


鵺。

なんで今、鵺だったのですか。

なんでそう思ったの?と逆に質問されてしまいました。

もうずっと前から、今日の日に鵺をされることを決められていたはずなのに。今、今私がもやもやと思っていたことや、世間の色々と、タイムリーに繋がっているのに、心底驚いて。やっぱり涙がほろほろ出てしまって。

…それは、あなたの感性だ、と。
…それが、能だ、と。


鵺。
鵺は、現れて、語って、消えていく。
鵺を仕留めた頼政、頼政に仕留められた鵺。どちらがどちらなのか、夢の中になって、消えていく。

そんな風にして、今もまた、鵺が鳴いている。

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